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STORY 迷走飛行症候群1の続き

迷走飛行症候群④

始業式も終わり特別棟にある多目的ルームに教材をクラスごとに取りに行ったあと、ホームルームで明日からの時間割表やら連絡事項のプリントが配られた。
サスケは配られたそれらにざっと目を通して、明日からいきなり体育の授業がないことに安堵する。特に運動が嫌いなわけじゃない。今日帰って体操服を用意する手間が単純に煩わしいと思っただけだ。
それらのプリントを適当にファイルにしまい、壇上のイルカを見上げた。
最後に「そしたら皆遅刻すんなよー」とのイルカの言葉を聞いて登校初日は終わりをつげる。
クラスそろっての礼が済んだところで、振り返ったナルトが話し掛けてきた。
「なぁ、うちははこれからすぐ帰えんの?」
気安い言葉に今だ違和感を感じながらもサスケは「ああ」とだけ短く返した。
「なんだつまんねぇの」と小さく聞こえる。
最初のホームルームが終わったあと、キバはサスケをくわえてナルトに話しかけた。どうやらナルトはここに小学部2年の一学期までいたらしい。聞いてみればサスケの家のすぐ近くに住んでいて、小学校に上がる前からキバはもちろんサスケともよく遊んでいたという。
「うちはとは火影公園でよく遊んだってばよ。お前覚えねぇの?」
そう言って唇を尖らせる仕種は初対面にたいするものよりも確かに気安い。言われてみれば、今のナルトをそのまま小さくした子供と遊んでいたような気がする。どうやらサスケよりもよほど当時のことを覚えているらしいナルトが親しい口をきくのもうなずけた。
「そういえばガリガリのチビがいたような気がするな」
「てめーだってチビだったってばよ!」
間髪いれずナルトが声をあげた。
「ふぅん、お前ら仲良かったんだ」
睨み合うナルトとサスケを交互に見やりキバが意外そうにつぶやく。
「仲、良かったってばよ。こいつあんま覚えてねぇみたいだけど」
「仕方ねぇだろ、んなガキの頃の話し」
サスケは憮然として答える。睨むようにサスケに向けられていたナルトの瞳がわずかに曇ったような気がした。
正直サスケは自分の記憶の悪さに気まずい思いをしている。キバやナルトに言われて始めて、ああそうゆうこともあったと思い出すのだ。
一方的に自分のことを知られているというのは居心地が悪い。
「うちはってばまだあそこに住んでんの?あの大っきいお屋敷」
「ああ」
「懐かしいってばよ。おばちゃんもおっちゃんも元気してる?あ、イタチ兄ちゃんは?」
嬉しそうに尋ねてくるナルトにサスケは辟易しながら答える。
「皆変わりねぇよ」
「イタチ兄ちゃんって今何してんの?」
「大学行ってる」
「サスケの兄貴ってすっげぇ頭いいんだぜ。こいつも腹立つくれぇ頭良いけどよ」
「ここの大学?」
「いや……」
「なんと医学生!」
「イタチ兄ちゃんすげぇ。頭良さそうな顔してたもんな」
「お前覚えてんの?」
「だって一緒に良く遊んでもらったってばよ」
な?と同意を求めてくるナルトにサスケは曖昧にうなずいた。そんなこともあったような気もするが、やはりサスケの記憶はおぼろげだ。
「うーす。久しぶりだな、ナルト。オレのことは覚えてるかよ?」
緩めたネクタイの雰囲気をそのまま背負っただるそうな声が割って入ってきた。
「もちろん覚えてるってばよ!シカマルだろ?」
ニっと歯を見せて笑うナルトにシカマルもふふんと返す。
「こうやって見ると皆変わってねぇってばよ」
「お前もな!」
「そういえばさ………」
まだどこどこの駄菓子屋はあるのかとか、今度小学部に行こうだとか、たわいもない懐かしい話しで盛り上がっていた時、シカマルが「サスケ」と教室の扉を顎でしゃくった。振り返った先に春野サクラを見つけて、そういえば今日は一緒に帰る約束をしていたことを思い出す。目があったサクラが途端に嬉しそうな顔を
した。
「悪ぃ、先帰る」
そう一言断るとサスケは席を立つ。
「おう」
今まであった賑やかな放課後の空気がその一言で崩れたことに、さらに居心地の悪さを感じた。さっさと行ってしまおう。
「またな、サスケ」
机の横にかけていた学校指定の鞄を無造作につかむ。少し屈んで見えた先にどこか驚いたようなナルトの顔があった。
「……じゃあな」
それをあまり見たくなくてサスケは目をそらす。そのままサクラの待つドアに足をむけた。
「う、うん。また明日」
ナルトの言葉を背中で聞き片手をあげた。
その時サスケはまだ気づいていなかった。複雑な表情をみせるナルトの心の声が一切聞こえないことに。



「見かけない子いたね。もしかして転校生?」
学年が上がるごとに小学部と違って中学部は階が下がる。踊場に足が着いたところでサクラがそう問いかけてきた。
もちろん見かけない子というのがナルトを指していることは分かっていた。
「ああ」
「でも凄く仲よさ気だったね。特にキバとか。廊下まで声が聞こえてたわ」
特に非難するというわけでもなくサクラはそう言った。
彼女とは2年の時クラスが一緒で、頭が良く優等生的な生徒であったが、性格は明るく気さくで男子からの人気も高い。
そんなサクラに3学期ももう終わろうかという時期に告白された。
当初サスケは誰かと深く付き合うということに対してあまり積極的ではなかった。女子と付き合うだなんてどれだけ疎ましく感じることだろうと常々思っていたのだ。
そんなサスケの先入観を打ちやっぶったのは、どこかクールを装った感のあったサクラのサスケにたいする大きな心の声だった。前々からそういったギャップのある女だと認識していたが、サスケに告白するときの彼女はいつにも増してそれがひどかった。思わずサスケが笑い出してしまうほどに。
打算のないストレートな感情をぶつけてきたサクラにサスケも答えてやりたいと思ってしまった。あまりに必死なサクラの心の声に、
「お前のこと、好きになりたいと思う」
そんな曖昧な言葉で返した。
かくして春休みをはさんで恋人というにはぎこちない、友達の延長のようなサスケとサクラのお付き合いが始まったのだった。
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