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下に、『百日紅より候、』7話目の続きupしてます。
ある意味幸村総受けの図(笑 にしても嫌な回だった。自分の足を引っ張ってるとしか思えん。終わりまでに何個拾い忘れがあるか分かりませんな。こんなシーンはとっととすっ飛ばしてしまいたいところなんですが、入れとかないと後々困りそうだし。早く萌えシーンとか書きたい。


もうすぐ、夏のお祭りですねー。明瑚さんは今年もお留守番です。さすがにあの中を一般参加で乗り切れるとは思えない。あと、用事もあるので大人しくしておこうと思います。
あ、でもインテは行きますよ!!サスナルアキヒカダテサナスペ周るんだwww今回は一人参加なので、見かけたら構ってやって下さい~。


『百日紅より候、』7話目の続きup


「いくら梵天でも絶対駄目でござる!」
「固いこと言うなよ!男だろ!」
「わ、分かっていながらそのようなことを申すとは、この召しものは遊びではござらん!それがしはれっきとした男でござるあああぁ!」
「あああぁ!!うっせぇ!うっせぇ!!もう二度と言わねぇ!!とっとと行きやがれ!!」
「ぎゃん!」
与えられた部屋から聞こえる賑やかな声の後、転がるようにして弁丸が出てきて虎哉は咄嗟に受け止めた。
「大丈夫ですか?」
「あ、虎哉様!」
慌てて顔を上げた面は真っ赤になっていて、弁丸はあたふたと虎哉から身を離した。
「これから湯殿ですか?」
「は、はい!」
「私も後で頂きましょう。先に行ってらっしゃい」
「はい!失礼いたしまする」
さっと一礼し、ぱたぱたと走って行く小さな背中を見送り、虎哉は部屋へと足を入れた。
「梵天丸。またですか?」
呼ばれた梵天丸は不機嫌のまま、無理矢理開いていた書物を閉じた。
「またです」
唇を歪めながら苛立ちを隠しもせず、梵天丸は忌ま忌ましそうに虎哉に返す。
「そう怒るものではありませんよ。若子にも何か理由があるのでしょう」
「でもその理由を弁丸は言いません」
駄々をこねた小さな童の風体で梵天丸は鼻を鳴らす。
「聞かれればあなたは全てを話しますか?己がよしとしないことを強いてはいけません」
そこで梵天丸は眉間を寄せ、口を閉ざした。それを肯定と取り、虎哉は小さいながらも設えられている床を背に腰を降ろす。
「別にいいではありませんか、まだ一人で入るのは嫌なのですか?」
秀麗な面差しにふふと唇に笑みを浮かべて、虎哉は意地の悪い顔をする。こんな時の虎哉に梵天丸は敵わない。良いように言いくるめられるのが常だ。
奥州を出るまで梵天丸は一人で湯殿に入ったことがなく、米沢城では常に近習か侍女らが付き、一切合切任せていた。それを知る虎哉の揶揄なのであるが、そんなことが理由で弁丸を湯殿に誘ったわけではない。確かにあわよくば、今日の梵天丸の勝利を理由として、背を流させるくらいはいいだろうと思ってはいたけれど。それはここで言うことではない。
「そんなことはありません。ただ……時間の短縮になるかと思っただけです。それなのに弁丸のやつ」
寺院には民間に解放してある浴堂と、僧侶らが使う湯殿がある。一応は客人ということで梵天丸らは湯殿を使わせてもらっているのだが、決して一人でしか入れないような狭いものではない。だから誘っただけなのだ。なのに弁丸は梵天丸のそれに頷いたことはない。最初はこれも女子の格好をしていることと関係しているのかと思いはしたが、どうも違うようである。確信は持てないけれど。
「これも『7歳までは神の子』でしょうか?」
生まれてから幼い間は魂がまだ定着しておらずその魂は純粋で神様にも近い。些細な事で悪霊等に連れて行かれやすいもの、と考えられていたことからの言葉だ。
理由はこれでなければ、もう後は梵天丸とは入りたくないという弁丸の拒絶しか残らない。普段あれだけ梵天、梵天と人の背中をついて来るやつが、それはありえないとは思うのだが、いかんともしがたい。梵天丸は弁丸ではない。
「梵天丸は何故、若子に名がないのかはもう知っていますか?」
「7つの歳までしか生きれないと占術師かなにかに言われたと聞きました。その為に名も奪ったのだと」
あの日、互いに名を呼ぶようになった時のことを梵天丸は思い出す。
「それもありますが。梵天丸、日の本の地図はありますか」
「あ、はい。ここに」
弁丸に名がないことと、地図とどう関係があるのかは分からないが、梵天丸は言われた通り文机の上に置いてあった地図を渡した。虎哉は受け取ると、向かいあった梵天丸に見やすいようにそれを畳に置く。
「この一帯が奥州。そしてここが米沢。これは分かりますね?そこから下ってこの辺りが甲斐。わたしたちが今いる場所はこの辺りです」
虎哉の説明に、差される指先を追いながら梵天丸が頷く。
「そして真田の領地である上田はこの辺り。ここに上田城。梵天丸、何か気付きませんか?」
地図から目を離し、虎哉が問う。
梵天丸は、ここと言われた場所をじっと見つめるが、墨で描かれたそれが著すのは、大まかな地形のみ。ここから何を汲み取れと言うのか。
「山も川も描いてなくて何に気付けと……オレにはただこの地図の真ん中にあるとしか」
困ったように梵天丸が顔を上げる。
「それですよ」
「え?」
虎哉は唇の端を吊り上げ、意外そうな顔を向ける梵天丸を見やった。そして、再度地図に目を落とし、
「上田はこの日の本の中心に位置します。分かりますか?天下を我が手に収めようと、幾人もの武将が名乗りを上げましたね。奥州はまだ準備が整っておりませんが、いずれは参戦することとなるでしょう。もし奥州が天下に名乗りを上げた時、攻め行くには南下するしかありません。必然的に中心地へ向かうこととなります。勢力を伸ばしてきている豊臣、徳川もこの領土を欲しがるでしょうね。中心部にはならずとも、攻め込む際の足掛かりには十分なるのです。つまり真田が統べる上田は、激戦地帯となる可能性が非常に高い領地なのですよ。もちろん、これまでにも何度となく攻め込まれています。真田家は嫡男の夭折が相次いだ為、赤い着物を着せたり、女子の格好をさせたりという風習が色濃くある、とそう考えられなくもありません。さらに世は戦国。虎若子への過ぎる加護も、あって然るべきものなのかもしれませんよ」
まるで教鞭を執るかのように、虎哉は説明を加えてゆく。梵天丸にはまだ情勢は分からないものであったが、弁丸の国元が場所柄この日の本の中心に在り、狙われやすい領地であるということは分かった。
「遅かれ早かれ真田が表舞台に出てくることは間違いないでしょう。流石と言うべきか、すでに甲斐は手を打っておりましたね。さて、次の一手は誰が打つのでしょう。越後か、それとも北条か」
「弁丸は……」
ついその名が出てしまったのは、彼の行く末が気になったから。真田家の嫡男である弁丸はその渦中でもあるのだ。
「信玄公の後ろ楯ある内は憂いなし、と言っておきましょう」
「奥州は真田を…家臣にすることはできませんか」
何も考えずに発っせられた台詞だったが、躊躇いが伺えることから梵天丸の本気が滲んでいた。
「今のところ真田が武田を裏切るとは思えませんね」
やはりという虎哉の応えに、梵天丸は食いしばった奥歯に力がこもる。
「オレと弁丸は敵対するんでしょうか」
ひとつの可能性。

もし、その巣の中に己に仇なす外敵がいたと知ったら、

「いづれ……あなたが望めば」
虎哉の声が耳の奥でこだまする。
弁丸と剣先突き合わせ、木刀を打ち合うのは好きだ。
だからといって、命を奪い合う敵同士になっていいなんて思わない。
そんなこと望むわけが。
「もし、あなたが天下を望めば」
覗きこむ虎哉の目が鋭さを帯びたような気がした。
「必ずや、相見えましょう」
どくんと梵天丸の胸が大きく鳴る。焦燥のような猛りが梵天丸を追い立てた。
それは今だ体験しえない戦場でのことを虎哉は言っているのだろう。
想像などつくわけがない。
(そんな、先のこと……)
「こんなところでする話ではありませんでしたね。ですが、私はあなたたち二人が一日でも長く、健やかに、この乱世を迷いなく生き抜く事ができるよう願っております。時には錫杖を振るい、辛辣にも聞こえることを口にするかもしれません。それも全てはあなたたちの為。しかしそれを常に胸に置かずともよいのです。忘れてしまったとしても、あなたなら振り返り思い出すこともできましょう」
虎哉はいつもの穏やかな口調で、そう締めくくった。



つづく

次こそちゃんと梵弁!!


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